Realisticdreamer#2_負けじ魂
関西創価高校教頭の佐藤進です。
さて、前回は、私たち大人が全く経験してこなかった社会を歩んでいくことになる今の高校生に、どんな「アドバイス」ができるだろうか、「どんな力」をつけてもらいたいのだろうか、というお話をしていました。
つけて欲しい「力」について考える前に、私の好きな学園生のエピソードを紹介させてください。
関西高が自慢できる様々なプログラムの一つに「UP講座(University Partnership Program=大学や企業の専門家に講師をしていただく特別講座)」があります。
そのUP講座に製薬会社の方をお招きして、「遺伝子診断」について学んだ際、講師からこんな問いかけがありました。
「『ナヤマ氏病』という致死率が高い病気があります。残念ながら、現代では治療法が分かっていません。ただ、この病気の発症のメカニズムは判明していて、『kkl遺伝子』に変異があり、さらに『nym遺伝子』にも変異がある場合、50歳位から発病し、やがて筋肉が萎縮して死亡するのです。
実は、あなたの『kkl遺伝子』には変異があることがわかっています。
あなたは『nym遺伝子』の遺伝子診断を受けますか。
※念の為、この話は架空の話です。
皆さんなら、どのような判断をされるでしょうか。
その時に参加していた学園生の判断は「9:1」の割合で「診断を受ける」でした。将来、自分が致死率の高い不治の病を発症するという事実を突き付けられるかもしれない診断を9割の生徒が「受ける」ことを選んだのです。
実は、この製薬会社のプログラムはいろいろな高校で実施されていて、講師の方によると、どの学校でも、おおむね「5:5」で意見が分かれるそうです。
予想外の反応に講師は驚いて、一人ひとり理由を聞いて行きました。すると、一人の生徒がこう答えたのです。
「病気になると分かってからが、(人生の)勝負ですよね!病気になることが不幸なのではなく、病気に負けてしまうことが不幸ですから。」
それを聞いた講師ははじめ「きょとん」とされていました。
「勝負ってなに?誰と闘うの?」
でも、だんだんと、目の前の高校生が話していることの意味を理解し、最後のまとめでこんな話をされました。
「皆さんが、死に至る病の宣告さえも前向きにとらえて、それを乗り越えようとされる強い精神力の持ち主であることは、わかりました。ただ、皆さんと同じ世代のほかの人が同じ考え方をするとは限らないということだけは、知っておいてくださいね。」
目の前の様々な困難に負けずに立ち向かおうとする精神。
たとえ、失敗しても何度でも挑戦しようという強い意志。
本校が「負けじ魂」という名前で呼んでいるこの精神を、学園生が体現してくれた瞬間として、私は感動的な思いでこのやりとりを見ていました。
始めの話に戻りましょう。私たちは、我が子に(目の前の生徒に)どんな「力」を付けてもらいたいのだろうか、という話でした。
そして、もう答えは出ていると思います。
前回確認した通り、これからの社会がどのようになるか?
今まで経験してきたことの延長線上に、未来というものを想像してきた私たちには予測ができません。
予測不可能であるがゆえに、思いもよらない想定外の状況に直面することが必至の人生を歩む我が子に、ぜひ、つけてもらいたい「力」。
それは「どんな困難にも負けずに立ち向かっていくことができる力」。
言い換えれば、「負けじ魂」を我が子にはもってもらいたい。
それが私たち大人の共通の願いなのではないでしょうか。
「『負けじ魂』が学べる学校、それが関西創価高校です!」と高らかに宣言できる学校にしていければ。
そんな目標に向かって、日々努力しています。