情報科#3_「情報」でどのような力を身につけてもらいたいの?

こんにちは、情報科の辻です。
最近、情報科の具体的な授業内容について質問を受けることがありました。前回の記事では、「情報Ⅰ演習」という大学入学共通テスト対策の話を書いております。ひょっとすると、情報科の授業そのものが「大学入学共通テスト」の対策だと認識されている方がいらっしゃるかもしれません。これに関しての私のアンサーは確実に「NO」です。

本年度より、「SG(Soka Global)クラス」と「SP(Soka Progress)クラス」という新しいクラス編成がスタートしました。今回は、この2つのクラスのうち、1学期前半に行った「SGクラス」の授業を紹介します。
(本校のカリキュラムでは「情報Ⅰ」は、1年生の時に2時間授業を行うものであり、2・3年生ではこのような授業がないことをご承知おきください。)


◆何のために「情報」を学ぶのか?

見出しの問いを色々な所で色々な人が口にしています。
私は、本校に勤める前に東京都町田市にある都立高校で3年間勤めておりました。教員になりたての当時で、右も左も分からない中、同じ町田市内に勤務されていた小原格先生と出会い、様々なことを教えていただきました。
(小原先生は現在、都立国立高校に勤務されています。)
今でも東京へ行く機会があれば直接会ってご指導をいただいており、私の中では情報における師匠という存在です。
ということで、ベースは以下のリンクにもあるように小原先生の行われていることですが、それを私なりに少しアレンジしたものを紹介いたします。

◆「情報」を学ぶ意義は「問題解決」

小原先生と話す中で導き出した結論は、「情報」を教える意義は「問題解決」であるということです。「問題解決」とは「理想」と「現実」の「ギャップ」を埋めることと定義できます。「毎朝7時には起きたいけど、どうしても7時半になってしまう」ということを例にあげるとすれば、「毎朝7時に起きる」という「理想」に対して、「毎朝7時半に起きる」という「現実」がある。この理想と現実の差が「ギャップ」であり、これを解決することが「問題解決」となります。また、問題を解決するためには「毎朝7時には起きたいけど、どうしても7時半になってしまう」といった「問題の発見」が重要となります。

◆PDCAサイクルをより進化させる手法

そこで1学期前半は徹底して、自分自身の問題を発見し、自分の行動できる範囲で問題を解決する取り組みを行っています。問題発見も「毎朝7時には起きたいけど、どうしても7時半になってしまう」と言ったような数値などで明確化することなども教えています。
世の中では、「PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクル」と呼ばれる概念がありますが、小原先生は先ほどのものにResearchを加えた「RPDCAサイクル」を教えておられます。これに対して私が用いているのは、RPDCAサイクルのRとPの間に「V(ビジョン)」を加えた「RV-PDCAサイクル」です。自分の問題を発見することよりも「より良い自分に近づく」という目標に直結するビジョンを掲げることが大切だと考えました。具体的な理想があるのも「将来こういう人になりたい」などの大きな目標(ビジョン)があってこそです。生徒にはそれを大々的に掲げてもらいたいと思い、その中から身近な問題を発見・解決していく人になってもらいたいと思っています。
(RV-PDCAサイクルは、私の知る限り大分県高知県、そして文部科学省でも生徒指導提要のところなんかで見かける内容です。)

◆「なぜ理想通りにならないのか」などを分析

さて、一旦問題が先ほどのように具体的になったら、「なぜ自分はそのようなことができないのか」「どうすればできるようになるのか」と思考を進めてほしいと思います。小原先生はそのプロセスをうまくまとめたシンキングツールを開発されました。「IE図」と呼ばれるものです。以下のリンクを参照していただければと思いますが、理想や現実を記入した上で、ロジックツリーの要領で、下段には「なぜできないのか」を4W1H(Who、What、When、Where、How)に分けて深掘り、それと上下対称に上段には「どうすればできるようになるか」を4W1Hに分けて深掘っています。これにより、「なぜ」の原因に対して「どうすれば」の解決方法が1つのシートにわかりやすくまとめられます。
(なおリンクのIE図は生徒に出している例になっているので、生徒の誰かのものではないので安心してください。)

◆解決方法は手軽で効率的?

さて、原因や解決方法がわかったとしても、自分だけの力ではどうにもならないこともあります。簡単に手軽に実行できるものがいいです。また、行えたとしても、効果の薄いことであるならばあまり意味がありません。このことについて自分で考えてもらうために「座標軸」を用います。これは「解決」となる内容を付箋にし、「手軽さ」と「効果」でどこに位置するか自分で考え、「より手軽でより効果的」な解決を二つ選んでもらう取り組みです。
(下図参照)

座標軸

◆1日の自分を振り返るルーブリックを自ら作成

そして2つの解決方法が決まったら、ちゃんと1日1日決着がつくような内容に落とし込むためにルーブリック作成をします。これにより、MECE(もれなくダブりなくという意味)になっているかどうかを確認していきます。(下図参照)

ルーブリック作成

生徒が自分自身で目標を立て、1日1日どうだったかを平日の5日間実行(Do)してもらい、それがちゃんと実行されていたかどうかを確認(Check)し、次にどうしたらいいかを考える(Act)という流れを、この期間に徹底的に学び実行してもらいます。

◆「何のため」に学ぶのか?

教科指導というと、ただ勉強だけの指導に留まってしまいがちですが、自分の弱点などを自ら分析し、自分の生活を向上させていくーー。(ちょっと飛躍した言い方かも知れませんが)「人間革命」していく過程を科学的に見る実習こそ、本来、教科や学校に求められるものではないかと思い、この授業を行なっています。自分自身を客観的・科学的な見方をすることにより、新たな視点が得られることもあると思います。

今回の実習は今までの自分を振り返って、これからの自分を少し考える実習ですが、1学期の後半は将来の自分を徹底的に考えてもらうSociety5.0も含んだ実習を行います。意訳にはなりますが、「現在の自分の結果は過去に原因がある。未来の結果を知りたければ、現在に原因がある」と言う言葉があります。というように、「情報」の授業は、過去、現在、未来の自分を考えます。そして、繋がるように「GRIT」では過去、現在、未来の"世界"についても考えていく授業として1学期は位置付けています。是非、これを機会に、これを読まれた方も、過去、現在、そして未来を考えてみませんか?
そんなことを書きながら現在も業務に追われて四苦八苦している私でした。おあとがよろしいようでm(_ _)m